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物語(RP)としての月下美人
――――この呪われた地をあなたの手で…来る人を幸せにするのですよ
「約束を果たす時がやってきたよ。母様」
墓標の前でかつての言葉を思い出す。今私が立っているこの地、妖界を滅ぼすことになった私と彼女の死闘。わずかに上回った彼女の力が私を飲み込まんとする時、母と父が身を挺し私を庇った。父の体は目の前で霧散し、母は体こそ残れど死を待つのみ。
それを目にしてからは記憶がない。気づけば絶大な力を持つ彼女はその場に倒れていたのだ。
私は勝利した。勝利こそすれどその瞬間の私は両親を失った喪失感で一杯だった。いつ絶えてもおかしくない容体で母は私の涙を袖で拭いながらその言葉を残した。
暫くは…いや、人間からすれば数百年経ち、過去を断ち切るため、未来へとつなぎ、両親を守り切れなかった挙句、両親に守られたせめてもの償いとして。
私は似たような境遇に生きる鬼龍と、もう一つの人間界に生きる半神半人の神主様と力を合わせ創り上げたこの楽園。来る人を悦に浸らせる極楽浄土にもほど近い。
瘴気は鬼龍の炎で相殺し、私がもう一つの人間界とこの地の空間を繋ぎ、神主様が建物を造った。
そしてもう一つ。――――で完成する。
神仙術式 畜生道裏拍手 "古を弔う樹命の蓮"
――――より多くを幸せにしよう。安心せよ母上、わっちはもう泣かぬ。だからここから見守っていてほしい。
楽園の名を月下美人。月の下に生きる民たちを迎え入れる地。
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